最近にわかに「築古戸建て投資」が注目されています。

すでに成功している人たちからは「こんなにオイシイ投資は他にないでしょ!」くらいの勢いで勧められるケースも見受けられますが、投資はあくまでも個人の考え方次第。良いことしかない投資などあるはずもなく、しっかりとメリット/リスクを踏まえた上で取り組むことが大切です。

そのための知識として、最低限知っておくべきことを、私の経験を踏まえてお伝えします。

戸建ての場合、ポータルサイトを検索すると安いもので200万円くらいから売りに出ています。今手元に現金があり、他に具体的な使い途がないのであれば、呆れるほど低金利の銀行に預けておくよりも、不安定な株やFXに資金を投じるよりも、物件を買って家賃収入を得る方がよほど収益性が高いことは間違いありません

築古戸建て投資の『良い』トコロ

少ない資金で購入できる

戸建ての場合、ポータルサイトを検索すると安いもので200万円くらいから売りに出ています。今手元に現金があり、他に具体的な使い途がないのであれば、呆れるほど低金利の銀行に預けておくよりも、不安定な株やFXに資金を投じるよりも、物件を買って家賃収入を得る方がよほど収益性が高いことは間違いありません。

あるいは、相続などで物件を取得して全く賃貸をやりたがらない所有者が、解体費用固定資産税の負担さえ面倒だと考えて、0円もしくはお金を払うから誰か引き取って欲しい、という要望もあるくらいです。

高利回りのものが多い

築古の戸建ては、融資がなかなかつかない、買手を見つけることが難しいなどの理由により、利回り15%以上のものがたくさんあります。中には50%以上とか、前述のように0円やお金をもらって所有する場合などは、「利回り」という発想を越えた利益が生まれます。

管理費がかからない

公共スペースを持たない戸建ての場合、庭の清掃や建物設備の維持などは、基本的に住んでいる人が行うものなので、管理会社を入れて家賃の数%をかけて業務委託する、ということはです。家賃も直接入居者にオーナーの口座へ振り込んでもらう方が合理的といえます。

入居期間が長い

戸建てに入居する人々はたいていファミリーだったり、高齢者の一人住まいというケースが多いため、単身世帯のように次々と転居したり結婚などで住み替えられる確率は低めです。一度入居されたら愛着を持ってずっと住み続けられることが期待できます。

資産価値が保持できる

建物の価値はほとんどなくても、土地があるのでそれなりの価値が維持できます。戸建ての売買価格は主に家賃収入からの利回りによって決められるので、実際の購入価格よりも土地の資産価値の方が高い物件も多いです。

これを狙って、意図的に安い戸建て物件を現金で購入し、次の大きな物件を買う際の担保にするというテクニックも使えます。現金で購入することの強みでもあります。

たとえ土地の価格が安くても、家賃収入に対する利回りで売価が決められる以上、いつまで経っても購入時と同等の値段で売れる確率が高く、具体的には利回り15%で購入したものが5年後にも同じく利回り15%で売れるケースが十分にあり得ます。

物件再生という社会貢献

総務省統計局による平成30年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は846万戸となっており、誰も住み手がつかず放置されたままの戸建ても増加傾向にあります。そんな状況下、空き家をきれいに再生し、人の住まいとして提供できることは、とても立派な社会貢献になるし、意義のあることだと思います。

戸建て投資の『気になる』トコロ

ほぼ現金買いを覚悟すべし

築古の戸建ては建物自体の担保価値が乏しいため、金融機関の融資は厳しいと言わざるを得ません。収益物件にしては数百万円で購入できる分、融資に頼らず現金で購入することが主になります。

「築40年」はあたりまえ

収益物件として機能する戸建ては、法定耐用年数という概念が無意味な発想に思えるほど、築年数の古いものばかり。それだけ傷んでいる物件と認識しましょう。築40年・50年などザラにあります。

もちろん戸建てには築浅のものもありますが、そういう建物の価値が残っているものは利回りがものすごく低いか、物件自体の価格が数千万円する、いわゆる普通に実需として存在する中古物件になりますので、このカテゴリー(収益物件としての築古戸建て)には含みません。

一棟アパートなどとは別次元の商材と考えるべきです。

再建築不可でも大丈夫?

古くから個人的な事情で建築されているものが多く、細長い私道の先にあったり、家の正面になぜか石の階段があったり、ユニークな場所にあることが散見されます。現代の建築基準法では建物を建ててはいけないことになっている、いわゆる「再建築不可」も普通にあります。

道路だけでなく、建ぺい率容積率などの法令から逸脱した物件も多数ありますが、そんなことは気にせず「住みたい人に貸せればそれでいい」くらいの開き直りも大事です。

家賃収入は100かゼロか

入居者がつけば満額の家賃が入るけれど、つかなければ収入はゼロ。当然のことですが、きちんとターゲットに合った物件づくりをしなければ、もともと入居者がいない物件に客付けすることは難しいですね。

現金買いであれば返済もないので、収入がゼロになってもマイナスにはなりません。粘り強く入居者をつけていくだけです。反面、入居付けの見込み無く安易な購入は禁物です。

“高利回りの罠”にご用心

利回りが高い物件には必ず理由があります。長い間誰も住んでいない物件では、建物がかなり傷んでいる可能性が高く、安い値段で購入しても人が住めるようになるまで修繕するのに数百万円かかることもよくあります。

表面的な買値の安さに飛びつくのではなく、修繕費を含めていくらかかるのか正しく計算してから購入を決めなければなりません。そのためのスキルや人脈も必要になってきます。

1戸あたりのキャッシュ・フローを考えてみて

利回りが高いからといって家賃収入がたくさん入るとは限りません。築古戸建ての平均家賃が5万円とすると、つまりはキャッシュフローが毎月5万円(年間60万円)となります。価格400万円なら利回り15%、300万円だと20%というカラクリ。この事実を冷静に見ましょう。

その上、先に現金を拠出しているわけですから、その自己資金を回収するまでに何年かかるのかも考えておきたいです。もちろんいつでも等価で売却できるならそんな心配は無用で、純粋にインカム・ゲインだけを考えていられれば良いのですが、望む時期に希望価格で確実に売却できる保証はないし、その間の修繕リスク退去リスクもあります。5年くらい所有して、修繕も退去もないうちに売り抜ければ合格でしょう。

リスク分散と規模拡大も忘れずに

キャッシュを増やすため、お金を貯めることを目的に戸建て投資を選ぶなら、数多く購入していかないとリスク分散もできないし、時間がかかります。本気で取り組むのであれば最低でも5戸以上は持っておくことが望ましいでしょう。

400万円〜500万円の戸建てを5棟買うには2,000〜2,500万円の現金が必要になります。それをすべて戸建てに投じるか、一棟ものの自己資金にして融資を受け、もっと大きな物件に投資していくか、考えどころです。今の資金をどう増やしていきたいか、できる限り数値でイメージしてください。

戸建て投資はこんな人に向いている!

借金をしたくない人

自分はどうしても借金が怖い、という人は戸建て投資から始めるのも一案です。少なくとも返済リスクがありません。現金を出すというのもそれなりの度胸が要ると思いますが、考え方次第ですね。

コツコツ稼ぎたい人

格安で古家を購入し、再生して賃貸に出し、売却して利益を得る。これが一つのビジネスモデルであることは間違いありません。物件を再生するための知識と経験は、そのまま大家力の向上につながる重要なスキルです。

小規模な物件から少額の利益を得ながら、時間をかけてじっくりと大家力を養っていきたい、という方針であるならば、戸建て投資は実に手堅い案件だと思います。

ボロ家の再生にやり甲斐を感じられる人

築何十年も経っていて、かつ人が住んでおらず、高利回りの物件は、ほとんどが悲惨な状態です。虫がいるとか動物の死骸があるなんていうレベルではなく、天井が崩れていたり床が陥没していたり、残置物で悪臭がすることも普通にあります。

そういう状況で逆に闘志を燃やし、キレイにして人が住めるようにすることにやり甲斐を感じられる人は、間違いなく戸建て投資に向いているし、きっとうまくいくでしょう。

情報網を構築できる人

戸建ての優良物件は、仲間内での情報交換が非常に重要です。ある大家の会では、その地域の戸建て物件をメンバー間で順番に回していき、それぞれが潤沢に家賃収入を得て、また次の物件を売り買いしていくスキームができあがっているところもあります。

仲介会社も然り。売りに出た時に真っ先に紹介してもらえるような人脈を作っておかないと、なかなかまともな物件には巡り会えないと思っておいた方が良いですね。

誤算だった私の実例

私自身、2017年9月に、大阪に昭和39年築の戸建てを1戸、現金で購入しました。

価格は400万円。利回り15%で家賃年収60万円、月々5万円のキャッシュフローです。固定資産税は年間6,100円で、一棟ものに比べればほとんど小銭の範囲です。

既に入居者がいるオーナーチェンジ物件。中学生の娘さんがいる3人家族ということで、当面は退去される心配もなく、現在まで順調に家賃収入を得ています。

前オーナーはご自身でリフォーム会社を経営しており、かなり思い入れのある物件だったようで、内装も丁寧に仕上げているので当分は修繕の必要もないと確信していました。

修繕は保険で、と思ったけれど・・・

収益物件には修繕リスクがつきものですが、突発的な破損・物損など大抵は保険を適用できるケースが多く、できるだけ求償にトライすることが得策です。

さらに地震保険では、ちょっとヒビが入ったくらいでもお見舞い金の意味での保険が下りるし、台風が来た時には保険金で外装を修繕する絶好のチャンスだとも言われます。

台風がやってきた、その時。

2018年10月。台風24号で関西地区に大きな打撃がありました。京都・大阪・三重で大規模な停電となり、屋根が吹き飛ばされた戸建ても数多く、ブルーシートをかけるだけでも人手が足りず2週間待ち、という事態でした。

私のもとには入居者から連絡があり、やはり屋根が壊れ、数カ所からだいぶ水漏れしているとのこと。すぐに修理業者を手配しようと手を尽くしましたが、被害が広範囲に渡っていたため信じ難いほどにどこの業者もつかまらず、なんと1年以上経過してようやく順番が回ってきました。

それまでの間、入居者さんとは連絡を絶やさず、時にはお見舞いにタオルやお菓子を送るなどして、なんとかクレームには発展しないギリギリの状態でした。

保険は下りたけど、半分だった。

私の物件はたまたま「連棟」またの名を「テラスハウス」といって、2軒の屋根がつながっている構造でした。保険金額は見積もり書で査定されます。修繕するには両方の家の屋根を同時に工事する必要がありました。

ところが隣の家は空き家で、オーナーとはなかなか連絡が取れない上に異常に消極的(やりとりの経緯は割愛します)。しかしとにかく早く修理しないことには私の物件の入居者さんがいつまでも雨漏り対策のバケツを離せない状況です。

やむを得ず両方の屋根を修繕する他ありませんでしたが、保険は私の物件の分しか認められず、残念ながら修繕費総額200万円のうち、およそ半分の100万円のみとなりました。

400万円の戸建てに修繕費300万円

さらに内装も被害甚大で、元通りにするだけで約100万円かかりましたが、これは保険で全額カバーできました。

こうして、台風被害による修繕費総額300万円のうち、200万円分は保険で賄えたものの、100万円が自己負担となったわけです。

この分を家賃収入で取り返すには、月々5万円の家賃で20ヶ月かかります。もう二度とこのような被害に遭わないことを祈るばかりです。

こんな顛末は、私に限ってのレアケースかもしれません。しかし実際にあった出来事で、私にとっての戸建て投資としては重くのしかかる事件でした。こういうリスクも覚悟しておかなければならない、ということです。

戸建て投資【まとめ】

築古戸建て投資は少額でできる不動産事業の一つで、高利回りで魅力的な面もあります。しかし必ずしも誰にとっても良いわけではなく、いろいろと知っておくべきことがあるのです。

利回りにおどらされない

物件価格が安い分、リターンの金額も少ない。さらに高利回りのものは修繕費も込みで考えるべき。投資回収にこだわるなら、それは「」なのか「」なのか、どちらを優先するか自分なりのポリシーを持っておくと良いです。

入退去が命運を左右する

入居者がいれば収入は安定するし、退去されれば原状回復費客付けのための費用がかかります。これはどんな物件でも至極当然のことですが、一棟ものに比べて一回の入退去が収支に与えるインパクトは大きいでしょう。

物件を選ぶ際にも、入居者の有無客付けの見込みによって成否が大きく分かれることをより強く意識しておくべきです。

修繕は保険でカバーしたい

大抵の突発的な修繕は火災保険地震保険でカバーできるはずです。私も常にそのように立ち回っていますが、今回だけはどうにもなりませんでした。何事も100%は無いということです。

必要以上に恐れることはありませんが、ある意味、覚悟も必要です。

長い時間かけて複数棟持つこと

私の経験上、物件価格400万円で利回り15%、つまり家賃年収60万円というのがスタンダードな規模だと思います。毎月5万円の現金収入が目安ですね。

この規模をどう受け止めるかが一つのポイントです。余程の現金が無い限り、少しずつキャッシュを貯めていき、1戸ずつ時間をかけ、複数所有してリスク分散を図る。これが王道です。

もう一度、融資付き不動産投資を考えてみる

数百万円が手元にある時、それをすべて戸建てに注ぎ込むべきか、一棟ものを購入するための融資の頭金にするか。得られるキャッシュと費やす時間を考慮に入れ、自分に合うスタイルを考えてみてください。

何が正解かは、誰にも決められません。他人の話はあくまでも参考に。納得と覚悟のできる投資を自分で選んで進むのが最善の道です。

この他にも不動産投資にはいろいろなスタイルがあります。こちらも参考に。

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