私は2016年3月以来、野立て太陽光、いわゆる地面の上に架台とパネルを設置するタイプの太陽光発電設備を所有しています。
およそ1,000㎡の土地に80kW、3,000㎡の土地に220kWの出力装置を備えた発電設備です。
一応、外周はフェンスで囲われていますが、牢獄の鉄条網と違って簡単に乗り越えられるしちょっとした器具で容易に破壊することもできてしまいます。
光を受け取るソーラーパネルからエネルギーを電力に変える装置(キュービクル)までの間は銅製のケーブルで繋がれており、そのケーブルが何者かに盗まれるという被害が、全国あちこちで発生しています。
私の太陽光発電設備も例に漏れず、不運にも的にかけられてしまいました。
今回はその時の一部始終と対策方法についてお伝えします。
ある日、売電グラフが0に!
太陽光設備の稼働状況はモニターでチェックしています。
極端に反応が少なくなるとメールでアラートが届くようになっており、原因が雷雨や地震などでブレーカーのような装置が遮断されることがあるため、その度に管理会社へ連絡して対処してもらっていました。
今回もまた同じようなトラブルかな、と思って緊急出動&復旧対応をお願いしました。
FAXで被害報告
ところが数時間後、普段は電話で「対応完了」の連絡があるのに、珍しくFAXが届きました。その内容はまるで緊急事態を告げる電報のように・・・
「キュービクルの鍵、破壊」
「高圧線が切断され、盗難」
思えば茨城県警察から、この数ヶ月間ずっと太陽光発電事業者向けにケーブル盗難の事件報告がメールで届いていました。まさか自分のところがやられるとは思っていませんでしたが、やはりついに来たか、という感じです。
さあどうする!? まずは専門家に連絡。
報告をくれた管理会社は設備の点検はしてくれるけれど修繕対応はしてくれません。
日頃から太陽光に関する知見に乏しい私にとって、他に頼れるのはかつてこの設備を販売仲介してくれた会社のみ。その会社は販売後もよく面倒を見てくれて、パネルが破損したり故障した時には迅速に交換してくれていました。
取り急ぎその会社に助けを求めるように連絡すると、私と保守契約を結んでいるわけでもないのに、できるだけ早く現地に行って様子を見てくると言ってくれました。
悲惨な被害状況
これでひと安心と思ったものの、やはり自分の設備が盗難に遭っているのに家でじっと連絡を待っているのも耐え難く、3日後には自ら車を運転して現地へ行くことに。
連絡した会社の代表もちょうどその時間に合わせて来てくれたので一緒に現場検証することができました。
現場にはまず畑を横断した足跡が・・・

そしてフェンスを破り、パネルを踏み越え

扉をこじ開け
キュービクルという集電箱(太陽光パネルから送られた光エネルギーを実用の電気に変換する装置)の扉をこじ開け

ケーブルを引っこ抜き!
送る側と受け取る側のケーブル接続部分をそれぞれ切断し、地中に埋まっているケーブルが引き抜かれていました。


なぜ盗難対象になるのか?
犯人の狙いはケーブルに使われている銅素材です。最近は銅が高騰しており、中でも電線から被覆をとった銅線は第1号銅線(ピカ線)と呼ばれていて価値が高いそうです。
高騰する銅素材
ある筋の情報によると盗んだケーブルを銅の買取業社に売ると1kgあたり1,800円程度になるらしい。犯人の大半はカンボジアやベトナムあたりから日本へやって来た人という話もあり、現地での月収が7〜8万円のところ、日本へ来て太陽光ケーブルを盗んで売れば、かなりの高効率でお金を稼げるという算段。
頻発被害に警察も大忙し
茨城県警察に通報すると4名の警察官が現場検証のためにやってきました。

警察の話では、茨城県内で毎日のように同様の事件が発生し、関東地区近県を含めると数千件の被害届が出ているとか。この日もここの検証が終わり次第、次の現場に行く、とのことでした。
虚しい盗難対策
地面に設置されている太陽光設備の現状ではフェンスに鍵をかけたり防犯カメラをつけたりしても、いくらでも簡単に破壊できてしまうため、これといった対策が講じられずにいる、というのが現状。
私が盗まれたケーブルに含まれる銅なんてたかが知れている量なのに、こちらは修理費用に100万円以上かかり、復旧するまで全く売電できないという、まさに死活問題です。
保険契約も厳しくなるばかり
さらに最近の保険は売電保証がついていないため、復旧するまでは0円の状態でひたすら待つしかありません。
この時期、この太陽光発電設備からの月間売電収入がおよそ100万円ですから、復旧までに1ヶ月かかると100万円の機会損失を被るわけです。
復旧までの道のり
これは人的災害ではあり事故のようなもの。後を絶たない犯人たちは時々捕まってはいるものの、損害額を弁償してもらえるはずもなく、当方としてはひたすらに一日も早い復旧を目指すしかありません。
まずはネットで検索
そこでネット検索して一番上に表示されたのが太陽光システムのトータルサポートをしている会社で、配線の盗難対策も項目に挙がっていました。やはり頻発している事象には専門の対策が存在するのですね。HPからは個人事業主向けにも優しそうな印象を受けたので、すぐに相談シートに記入して送信。
すると、翌日にはメール返信があり、さらにその翌日には現地へ視察に行ってくれというスピード感。その後電話がかかってきて、親切そうな人がハキハキと現状と対策を説明され、直ちに対応することを約束してくれました。たくさんある太陽光業者の中で、こんなにも親身に迅速に対応してくれるところに当たってラッキーでした。
銅をアルミに変更
先方が提案してくれた最善の策は、ケーブルを銅からアルミに換えること。アルミなら銅ほどの換金価値がないため盗難に遭うこともありません。心配なのは伝導率ですが、これはアルミケーブルのサイズを太くすることで対策してくれました。
扉にロックバー
せっかく修理しても、また被害に遭ってはたまりません。そのため、キュービクルの扉を簡単には開けられないように、バーを設置してもらいました。そのバーの根本にダイヤル錠をつけ、点検の際にはこれを外してから扉を開けてもらうようになります。

犯人に告知
そして「盗んでも価値ないよ」ということを告知するためのポスターを掲示。フェンスに鍵をかけたり防犯カメラを設置するよりも、こういう方が実用的で効果的な気がします。

ついでに総点検も
対策をしてくれた会社がトータルサポートをしてくれるところだったので、ついでにパネル清掃とパワコンチェックもお願いしました。
アルミケーブルが入荷されるまで2週間くらい待ちましたが、修理作業は2日で終わり、その後、ほどなくしてパネル清掃とパワコンチェックも完了。

その作業の間にまたパネルの破損(これは人為的でななく落石など別の原因)が5枚ほど発見され、これも新たに対処。それでも昨年の同期間中の売電量に比べ今年の方が高くなっています。太陽光の発電量には天候が影響することは言うまでもありませんが、交換して新しくなったアルミケーブルのおかげであることも十分に想定できます。
「雨降って地固まる」
盗難に遭ってぐちゃぐちゃになった現場を見た時はもう頭がクラクラして落ち込みましたが、頼りになる業者さんのおかげで迅速に対策を施すことができ、費用の方もある程度の保険金が下りて金銭的な損害は最小限で済みました。
まとめ
こんなひどい目に遭っても、冷静に、丁寧に対応することで活路が拓けました。
今回の学びをまとめてみます。
現場に赴いて自分の目で確かめる
普段は電話やLINEの連絡で効率優先にするけれど、悲惨な様子を自分で見に行ったことで、状況がより正確に把握できました。
これにより、初見の業者にも正しく状況説明できたし、保険求償の際にも臨場感をもって伝えることができます。
嘆く前にネット検索
自分が被害に遭うということは他にも同じような目に遭っている人がいるはず。先行事例を把握することは次に続く者にとって有益。
私はあまりネット検索しないタイプで、ついたまたま会った人から聞くことを鵜呑みにしがち。ネットの情報を丁寧に見て情報収集すれば、客観的でより有効な知識を得ることができます。
日頃から関係者との友好関係を築いておく
困った時にはじめて連絡を取るようでは、人間関係はなかなかうまくいかないもの。普段からメールや電話で丁寧な対応を心がけていれば、いざという時に頼りになります。
今回は複数の業者さんにお世話になりましたが、双方の進捗状況をタイムリーに報告し続けたことで、誤解なくスムーズに、最も低コストで素早く作業を進めることができました。
以上、太陽光発電所を持つ多くの投資家さんにとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
私がお世話になったスーパー神対応の太陽光業者さんはこちら。
株式会社VICTORY