不動産投資のリスクのうち、空室に次いでかなり心配されるのが「突発的な修繕」。

中古物件を購入しようとしている人はとくに、物件が傷んできて大きな修繕費を負担するのがコワイ、と不安になります。

かつての私もそうでした。

しかし、この7〜8年にわたる不動産投資経験の中で、私自身、実際に修繕費の工面に困ったことはほとんどなく、多くの人が言うように「修繕費は保険でカバーできる」ということが実証されています。

実際、この2年間でも21件の修繕で合計約1,000万円を支払いましたが、この度ほぼ全額を保険で取り返しました(この表現は語弊があるかもしれませんが)ので、その体験談を混じえて、最低限知っておくべき基礎知識をお伝えします。

保険に加入するときに気をつけること

保険の種類と特徴を知っておく

物件にかける保険としては、大きく分けて火災保険地震保険があります。このうち、地震保険は単独では掛けられず、火災保険とセットでの加入が必須で、しかも保険金額は火災保険の50%が上限、つまり5,000万円の火災保険に入れば、地震保険の金額は2,500万円までとなります。

いくら掛けるべきか

保険に加入する際、保険会社からの見積もりがあります。建物が全焼してしまった場合、完全に建て直す分だけの保険金額が必要かと思われますが、残念ながら現存の価値が上限となるため、築年数が古いものはそれだけ上限金額も低くなります。

掛け金に違いが出る根拠を理解しよう

掛け金の額は、支払われる予定の保険金額によって異なることは言うまでもありませんが、保険金額は保険会社の見積もり(=評価額)によって変わってきます。

評価の100%〜70%くらいまで。いずれにしろ全焼してしまうリスクの低さを考えつつ、妥当な金額を見極めるのには、個々に判断するしかありません。

特約(水害)や付帯設備など、どこまで補償をカバーするかも、掛け金に影響しますので、これもまたリスク想定の度合いによって変わってきます。

さらにマークしておく項目に「お見舞金」があります。火災保険で修繕費の10%〜30%が別枠で支払われるもの。この%によっても掛け金が変わります。

地震保険の厳しい仕組み

地震保険は火災保険と大きく異なる点として「修繕や建て直しをするための費用補填」という意図が薄れ、単純に「お気の毒さま」というお見舞い金になります。

したがって地域よって保険金額に対する掛け金の率も変わり、地震災害が多いエリアでは掛け金も高くなっています。

損害の程度によって「全損」「大半損」「小半損」「⼀部損」の認定を行い、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われます。 損害の程度が「⼀部損」に至らない場合は、保険金は支払われません。

保険料の見直し

保険会社もビジネスですから、掛け金に対して補償額・補償件数が増えると、やがて掛け金を上げざるを得ない状況になります。

現状では2年ごとに見直されており、毎回値上げするケースが多いため、値上げする前に加入するなり掛け替えを考えた方が良いです。

加入期間については、物件をずっと保有するつもりなら迷わず長期(最長10年)で、すぐに売却予定なら短期で入ります。地震保険は5年か1年の2択。特に予定がない場合はとりあえずできるだけ長期で加入し、手放すときに解約返戻金を受け取るという考え方が一般的です。

この他、細かい点については疑問に思う言葉をキーワード検索すればほとんどの解説がネット上にありますので、ぜひ調べてみてください。

良い保険会社の選び方

保険の内容について、各社で大きく異なることはありません。同じ保険金額・内容であれば、掛け金もほぼ同じです。

強いて異なる点を挙げれば、申請に対する保険認定の寛容度。つまり下りやすいか下りにくいか。これは会社によって、またその時期によって違いが出るため、どこが良いか、というのは正直わからないものです。

ここまでの基礎知識を把握できていれば、どこの保険会社を選んでも大きく間違えることはないでしょう。

それよりも注目すべきは代理店です。オーナーのために保険求償を積極的にがんばってくれる代理店で加入することが重要。求償能力は面談や説明を聞いただけではわからないので、大家仲間紹介してもらうくらいしか手はないですね。

物件を購入する時に不動産会社から保険代理店を紹介されることが多いので、まずはその代理店で保険加入し、トラブル時にどのくらい親身になってくれるかを判断します。合わないと思ったら代理店を変えるのも手ですね。

保険金をゲットするための4つの方法

いざというときにどれだけの補償をしてもらえるかを左右するのは、実は保険申請のやり方によります。誰が、どのように申請するかで結果が変わってきますので、私の実体験から本音をお伝えします。

保険代理店に任せる

一番ラクなのは、頼りになる保険代理店に任せること。腕の良い代理店さんは、案件ごとにどうすれば保険が下りやすいか熟知しており、迅速に動いてくれます。

逆に、お役所仕事のように杓子定規な仕事の進め方をするところも多いです。保険認定をするには事故の「原因」が大きく関わってきますが、天災なのか誰かの故意過失によるものか、または経年劣化なのか、はっきりと断定できないことが多々あります。基本的に保険はできるだけ下ろしたくない、という考え方のところは、ネガティヴな因推定をしてきます。

代理店に任せるのはラクですが、結果もまた代理店の進め方によらざるを得ないことになります。

管理会社にやってもらう

物件の管理会社の担当者が協力してくれれば、事故報告から申請までを代行してくれるところがあります。保険が下りれば修繕も請け負うことができるため、管理会社は求償するオーナーとの利害関係が一致しています。しかしどこまで協力してくれるかは、日頃の人間関係づくりにかかってきます。

自分で申請する

本来は、契約者本人が自ら申請することが最も納得感があるでしょう。しかし保険の申請に慣れていないとやや面倒に感じることもあるので、後述する申請の段取りを踏まえ、抜かりなく準備することが大切です。

保険求償の経験はスキルの一つにもなり、大家力を磨くためにも有効です。

保険求償のプロに依頼する

特に地震保険の場合、専門的な知識や、普段見つけにくい箇所をいろんなノウハウを使ってあぶり出すなどのテクニックも求められます。

地震保険では必ずしも修繕を必須としないケースも多いため、得られるお金が大きくなることがあります。そのため、保険求償を専門にする業者が出てきています。成功報酬として、保険金額の30〜35%を支払うことが一般的です。中には50%という会社もありますが、自然に考えて異常な割合だと思っておいた方が良いです。

保険が下りなければ手数料もなし、それまで一切費用がかからない、というところが良心的なので、事前によく確認しましょう。

中古物件では思わぬところから地震保険の対象になることもありますので、もしもトライしてみたい方はご一報ください。たしかな会社をご紹介します。
office@sakuragitaiyo.com

保険申請に必要な3つの条件

保険申請をするためには適切な順番があります。

  1. まず保険会社に電話をし、いつ、どんな事故があって、どのような損害状況なのかを簡単に説明します。この時、保険証券を準備して番号を伝えるとスムーズです。
  2. その後、担当者から連絡があり、必要な資料について説明があります。次の3つです。

事故報告書

保険会社から送られる申請用紙がフォーマットになっており、3〜4行で記載できる程度でOKです。合わせて保険金の振込先も記入します。これには契約者の印鑑が必要になります。

写真

管理会社から事故の報告があったら、できるだけたくさんの写真を取ってもらうように依頼します。スマホでの撮影で十分。一般紙にプリントアウトして提出します。

見積書

請求書ではないところがポイントです。保険審査は見積もりベース。ですので実際にかかった費用というより、かかると想定される費用を明らかにしておくことです。これ以上詳しくは書けないのでご推察ください。

3. 保険審査が終わると、契約者のもとに結果が伝えられ、その内容を承認すると、やっと保険金が振り込まれます。

保険が下りるケース、下りないケース

台風が来たらチャンス!

台風の影響で損害を受けた場合は、保険認定される可能性が高まります。本当に台風が原因なのかどうか明確な証拠がなくても、そうと推定されれば承認されます。

ツワモノのオーナーの中には「台風が来ると保険で修繕できてラッキー」と思う人もいます。ある意味羨ましい限りですが、台風が来るまで待つべきかどうか、オーナーの責任が問われるところです。

地震に由来する時は厳しいチェックが。

地震保険は高額になることが多いため、保険会社も慎重に審査します。震度3もしくは4以上の地震が物件エリア内にあり、クラック(ヒビ割れ)等の被害がどの程度起きているかを、調査員を現場に派遣にしてチェックされます。

地震保険については、一度否認された後でも、また別の故障箇所が見つかれば、再申請も可能です。申請に費用はかからないので、それらしい根拠が見つかるならば何度でもトライしてみることができます。

かなしい「経年劣化」

当然ですが、建物が古くなったために起きた故障は保険対象外です。原因がはっきりしない場合には、経年劣化だと推定されないように、写真や証拠を揃えることが肝要です。

水漏れが起きたときは

見積書の項目が重要です。たとえば経年劣化による水漏れの場合、水漏れ自体を修復するための費用は対象外で、水漏れによって損害を受けた別の箇所については対象になります。

その他、資材を運ぶための経費等は付帯費用として部分的に認められるなど、保険会社によって認定基準がやや異なりますので、自分で求償する時は経験値から判断するしかありません。

この保険金について、契約者が個人であれば税金かかりませんが、法人では収入として計上されますので注意が必要です。

まとめ:感情にとらわれず淡々とやるだけでいい

保険の求償は、普通の感覚では厄介に感じられる人が多いと思います。

自分の物件に事故があり、それだけでがっかりするし、せっかく貯まったお金を一気に吐き出すのも気が重い。でもそんなときこそ、やるべきことを淡々とこなしていく力が求められます。

基本的な進め方

管理会社から事故の連絡を受けたら、まず「なんとかして保険でまかないたい」と意思を伝えることが第一。その前提で一日も早く修繕を完了させることが、入居者への迷惑を最小限に留めるポイントです。

数値で管理する

大抵の修繕の場合、先に費用を負担して、あとから保険金を受け取るケースが多いです。かかった費用は詳細に記録しておき、どのくらい保険金が下りたのか、チェックしておくことは必須。

下りた保険金の額が、自分がそれまでにかけてきた作業の成果報酬と思って、抜かりなくやっていきましょう。

 

私自身の保険求償経験については、失敗談も含めてこちらのブログにまとめました。参考になれば幸いです。
保険求償で1,000万円をゲットした実例