収益不動産を選ぶ際、「利回り」「場所」に次いで着目されるのが「築年数」です。

築年数が短いものを探す前に、その意味を正しく理解しておくことが大切です。

不動産投資で重要なのは、築年数よりもむしろ「法定耐用年数」。これがどんな力を持つのか、初めて聞く人にもわかりやすく解説します。

「築年数」の意義を正しく理解しよう

まずは物件概要書に目を通す

収益不動産を紹介されると、必ず「物件概要書」を提示されます。そこには、物件名、場所、間取り、戸数、家賃月収などが書かれています。

そしてもちろん「平成7年5月築」とか、「昭和62年築」とか、その物件が新しく建てられた年が必ず明記されています。

これを現時点から差し引いたものが「築年数」ですね。

築年数が意味するものは?

もちろん新しければ新しいほど良いのですが、その理由を一般的に考えると、新しいものの方が古いものよりもキレイで、修繕のリスクも低い、ということになります。

しかし実際には、古いものだってリフォームやリノベーションされたものはキレイだし、何もケアをしないで築20年が経っているものよりも、しっかりと修繕したばかりの築30年の物件の方が、その後の賃貸事業は安定する可能性が高いのです。

建物自体の真の魅力をはかるには、単に築年数が短ければそれでいい、ということではありません。不動産投資を考える上での「築年数」にはもっと深い考察が必要です。

築浅物件にもデメリットがある

築浅」と言われる、築年数がまだ短い物件は、物件価格も高くなります。

価格が高くなる、ということは「利回り」が低くなる、ということですね。

利回りのことがまだよくわからない方はこちら

新しくて、高くて、でも利回りの低いものを探すか、

古くて、安くて、でも利回りの高いものを探すか、

となると、多くの投資家は、古くても利回りの高いものを選ぶケースが多いです。

築年数と法定耐用年数の関係

では、どの程度古いものを選べばよいのか、の参考にするため「法定耐用年数」を覚えておきましょう。これは不動産投資をする上で、必ず覚えておくべき数少ない用語の一つです。

各建物には、法律で定められた(=法定)、どのくらいもつか(=耐用)の年数というものがあります。

構造体別の法定耐用年数

法定耐用年数は、それぞれ建物の構造躯体によって変わってきます。

木造  22年

鉄骨造 19年〜34年

RC造/SRC造  47年

細かく定義される鉄骨造

鉄骨造は、そこに使われる骨格材の厚さによって、法定耐用年数が変わってきます。

骨格材の肉厚が4mmを超えるもの(重量鉄骨)・・・34年

骨格材の肉厚が4mm以下のもの(軽量鉄骨)・・・27年

骨格材の肉厚が3mm以下のもの(軽量鉄骨)・・・19年

*上記の境が4mmではなく6mmという説もあります。

一般的にハウスメーカーや主だった軽量鉄骨造の物件は、骨格材に肉厚2.3mmの鉄骨材を使用することがほとんどだそうですので、この場合には法定耐用年数は19年と、さらに短くなります。

建物の芯となる鉄骨部分が厚いとそれだけ遮音性も高まるし、頑丈で、耐久性も高い。したがって法定耐用年数も長くなるわけです。

この法定耐用年数は、物件を所有した後に行う減価償却(後述)にも大きく関わってきます。したがって「鉄骨造」と表記される物件を購入される場合には、きちんと設計資料で正確に把握し、顧問税理士などにも周知しておくことが重要です。

各構造体について詳しく知りたい方はこちら

法定耐用年数で融資が決まる

法定耐用年数に比べて実際の耐用年数(建物がどれだけ持ち堪えられるか)の方がはるかに長いため、言葉と現実がかけ離れていると言えます。ところが多くの金融機関はこの法定耐用年数をベースに、ローンの返済期間を算出します。

基準は「残存」法定耐用年数

法定耐用年数ー実際の築年数」のことを「残存年数」といって、法定上の残りの耐用年数として定義されています。

例えば、築10年の木造アパートの場合、

残存耐用年数は22年ー10年=12年

築25年のRCマンションの場合、

残存耐用年数は47年ー25年=22年

となり、この引き算された数値がローン返済期間の目安になります。

ですので、
築10年の木造アパートより、築25年のRCマンションの方が、銀行から長い期間の融資を引き出せる、ということになります。

また売却する際にも、法定耐用年数が残っている方が、買う人にとって融資を受けやすい=売りやすい、という考え方も持っておくべきです。

融資期間は返済額に大きく影響する

ただし、銀行によっては法定耐用年数を越えた融資期間を設定してくれるところもあるので、法定耐用年数が短い=融資期間が短い、と決めつけるのは早計です。同じ物件でも金融機関を変えると融資期間も変わることがあるので、アタックしてみる価値はあります。

いずれにしろ融資期間はできるだけ長い方が、月々の返済額が安くなることは間違いありません。毎月の返済額が減ればその分、経営がラクになります。短期にキャッシュフローを増やしたいのなら、金利を下げることばかりを望むのでなく、融資期間を長くすることにも着目しておくべきです。

減価償却を使いこなせ

収益物件を所有すると、当然ながら税務申告が必要になります。この時に最も重要なのが「減価償却」。減価償却とは、建物の購入費用を数年に分割して経費計上できる、つまり節税と大きく関わりのあるシステムです。

*土地は減価償却の対象にはなりません。

減価償却のメリット

たとえば建物価格を5,000万円とします。

家賃収入(売上)が年間1,000万円として、この売上から経費を差し引いたものが「利益」とみなされ、そこに税金がかかります。

その経費の一つが返済金利、もう1つの大きな柱が「減価償却」です。

5,000万円で取得した建物を、20年にわたって減価償却する場合には、毎年250万円の経費を計上できます。しかし実際にはその250万円を消費しているわけではないので、税務上の利益を圧縮することができ、節税につながるのです。

減価償却期間も法定耐用年数で決まる

建物にかかった費用を何年で減価償却するか、についても残存法定耐用年数がベースになります。残りの法定耐用年数に応じて減価償却期間を決めるのが一般的です。

たとえば残存法定耐用年数が15年あれば、減価償却期間も15年に設定できます。

但し、既に法定耐用年数をオーバーしているものについては、最短で4年を設定でき、それ以上長くても構いません。その物件からどのくらいの期間・どのくらいの利益を得るのかを見込んで、上手に節税もしくは事業拡大を図っていくことがポイントになります。

法定耐用年数「まとめ」

このように「法定耐用年数」は、融資期間と減価償却期間に密接に関係する重要な指標です。

築年数をチェックするときには、ただ数字だけを見るのではなく、構造体とセットで把握し、どのくらいの融資を引けるのか、を想定することが基本です。

そして所有後は減価償却期間を頭に入れながら節税を考え、いつ頃まで持ち続けるべきか、または売却するのであればいつ頃が最適なのか、を見極めることも大事なのです。