不動産賃貸業にはリスクがつきものですが、特に中古物件を購入する場合、突発的な修繕にどう対処していくべきか不安があります。
しかし私を含め周りの不動産投資家のほとんどが、修繕費がいくらかさんでも保険でカバーできている人ばかり。
そのくらい保険は重要なアイテムなので、私の経験を踏まえ、ここでしか話せないエピソードをご紹介します。
2年間で21回の事故
私が2012年から購入した収益物件はすべて中古です。しかも築18年〜30年のもので、合計8棟143室(戸建て1を含む)。
購入してから2〜3年くらいは特に大きなトラブルも起きず、満室にすることだけに注力していて、全般的に安定した賃貸経営ができていました。
ところがどの物件もちょうど瑕疵担保責任の期間が切れた頃に、給水管が破裂するなどの水漏れ災害が増えてくるようになったのです。
特に最近の2年間では、6ヶ所・8棟の物件のすべてで修繕を伴う被害があり、合計で21回。もうめまいがするほどの出費となりました。
頼りになる代理店だったのに・・・
私は日頃からいろんなセミナーやパーティーなどの会合を通じて人脈構築に勤しんでおり、その中でとても頼りになる保険代理店セールスに出逢いました。
その方は本当に優秀で、オーナーの気持ちがよくわかる人だったので、それまで加入していたすべての保険をそのセールスさん経由に切替えました。
すると彼は次々と保険を認定させ、大概の修繕はすべて保険でまかなうことができ、本当に大助かりでした。
ところがある時突然、忙しさのあまり病に倒れ、そのまま連絡が取れない事態になってしまったのです。保険会社から替わりの代理店を紹介されましたが、今まで承認されるか否か際どいものでも通してもらっていたので、これからはそうはいかないな、と漠然とした不安を感じました。
優秀だったセールスさんを責めることもできず、それでも溜まっていた求償案件をなんとかして片付けないと、実費でかかった修繕費用を取り返すことができません。私はまたいろんな人に声をかけ、保険求償を請け負う業者さんに次々とお願いしていくことにしました。
プロの業者に頼むのも限界がある
保険求償を代行してくれるプロの仕事は、まったく合法的ではありますが、主に地震保険の方が保険金額が大きく、それに見合った報酬金額も高額になるため、できるだけ地震保険を使うように動きます。
それで保険が下りれば良いのですが、最近は保険会社も査定が厳しく、鑑定人を現地に派遣してしっかりと査定するため、なかなか認定されません。
私の場合、地震保険でお見舞い金をゲットしたいわけではなく、水漏れなどの実際に損害があったものを修繕した費用を取り返したかったのですが、1件あたり50万円前後で、細かい資料を揃える必要もあり、ほとんどの業者が取り組んでくれませんでした。
痛い目に遭った戸建て物件
築50年以上の古い戸建てで、オーナーチェンジ物件を購入したものがありますが、これはたしかに購入直後から安定的に毎月家賃が入って素晴らしいものでした。
しかし2018年9月に起きた関西地区のゲリラ豪雨によって大きな被害を受け、修繕するにもなかなか業者の順番が回って来ず、入居者さんはそれから2年の長きにわたり、水漏れしたままの家に住むことを強いられました。
さらには、その戸建てはたまたま「連棟」といって隣の家と屋根が続いており、修繕するには隣の家のオーナーの了解が必要でした。しかし隣は空き家で、オーナーさんも全く修繕の必要を感じておらず、連絡もままならない状況だったので、やむを得ず私が2軒分の修繕費を負担する羽目になったのです。
そんな事情は保険会社には関係ないので、当然ながら私の家の分しか保険は支払われず、さらには申請を代行業者に頼んだため、30%の成果報酬も支払いました。
その結果、修繕費290万円に対し、保険金額で私が手にした分は180万円。これで110万円もの手出しが発生してしまったわけです。
もともと物件価格は400万円で利回り15%。年間60万円のキャッシュフローを得ている物件ですが、約2年分の利益が吹き飛んでしまいました。
失った1,000万円を取り返すまで
この戸建てを含め、前述の「頼りになる代理店セールス」がいなくなってからの求償案件は、2年間で6ヶ所・21回。そのほとんどが「水漏れ」であり、修繕費用は実額で9,936,307円。
運が悪かったのか私の物件購入時の見立てが悪かったのか、たった2年間で6ヶ所・21回も水漏れが発生してしまい、イメージとしては毎月どこかの物件でどこかの箇所が、直す度に次々と漏れていく、そんな感じでした。
当時、会う人会う人に「給水管の損傷による水漏れは外部要因が考えられないから、保険でカバーすることはできないね」と言われました。たしかに保険はいざという時の災害時の備えであるため、経年劣化による被害は保険対象外です。
しかしそれでも積もり積もった約1,000万円の損害額をなんとかして取り返したいと思い、もはや自分でできるところまでやっていくしかない、と奮起しました。
そこで数ヶ月かけて、21回分のすべての事故履歴から修繕完了までの報告書、写真、見積書を徹底的に集め、リスト化しました。それまでは管理会社や代理店の人に任せていたため、メールを読み返してもなかなか事実が整理できておらず、その度に関係者に問い合わせて突き止めていったのです。
保険申請は1物件ごとにまとめて行い、それでも毎回、分厚い申請書類を送り続けました。
特に最後の1物件は被害が多く期間も長かったため、5回の水漏れに対し、それぞれ上下の部屋と周辺の公共スペースの対応状況を揃えると、写真付き報告書が37冊、見積書で25枚にのぼりました。それが更にコロナ禍で保険会社の査定が滞り、申請からすべて解決するまでに2ヶ月かかりました。
しかしこれでようやくすべての案件が完了し、合計で9,992,924円の保険金額を獲得。中には運良く風災などのお見舞金をゲットできたものもあり、実際にかかった費用よりも56,617円のプラスで着地しました。
まとめ:今回の保険求償で学んだこと
今回、なんとか修繕費の全額をカバーすることができましたが、それは最後まであきらめずに、丁寧に作業を続けた結果です。
また、不動産投資で懸念されるリスクの一つ「修繕リスク」に対して、きちんと対処すればたとえ1,000万円規模の被害であっても保険でカバーできることを実証しました。
やはり自分で行動すると、見えてくるものが明確になります。恐れず、思い込まず、やってみることが大切ですね。ポイントは以下の通りです。
誰をキーマンにするのか
代理店が頼りになるならば、担当者に概要を伝え、あとは管理会社と連携をとって進めるだけ。これが一番ラクで安心です。すべてはチーム戦なので、オーナーはそれぞれの役割と目的をきちんと伝えながら進める必要があります。
プロの力を借りる
代理店が今ひとつ信用に足りないのなら、保険求償のプロに頼むのも一案。ただし人に頼む以上、費用(報酬)もかかるし成否も人に委ねることになります。
比較的ハードルの高い地震保険に該当するかどうか微妙な場合は、プロに頼んでみるのも良いでしょう。
中古物件では思わぬところから地震保険の対象になることもありますので、もしもトライしてみたい方はご一報ください。信頼できる会社をご紹介します。
office@sakuragitaiyo.com
ダメ元でもチャレンジ
最後は、オーナー自身が自分で申請する、というのがもっとも納得感あるし、経験を積むことによって次の求償機会にも役立つことがあります。
求償するだけは費用もかからず、失うものがありません。大家のスキルを磨くため、ぜひ一度はご自身でトライしてみることをお奨めします。
保険を上手に活かすための基礎知識については、こちらのブログもご参照ください。
これだけは知っておきたい!不動産での上手な保険の活かし方