一棟アパートの融資が厳しくなってくると、金融機関の中には比較的規模が小さくて担保価値を測りやすいワンルームマンションの融資に目を向けるところがあります。新築であれば比較的融資しやすく、自己資金が無くてもローンだけで買えてしまうケースが多いです。
そうなると不動産会社も、一棟ものの販売からワンルームマンション(「区分所有」といいます)にシフトするところが増えてきます。それは、一般のサラリーマンにとって最も買いやすく、営業のターゲットになりやすいからです。価格も800万円〜2,000万円程度で、見ようによってはお手頃価格に映ります。「1室」であることがあたかも自分の住まいを買うようなつもりでイメージしやすいからかもしれません。
初めて不動産を購入しようと考える方にはハードルが低く感じられるようですが、規模が小さいからといってリスクも小さくなるわけではないので、メリット・デメリットをよく理解して進めることが大事です。
ワンルームマンション投資、3つのリスク
一般的にワンルームマンション購入は、「気軽に始められますよ」という調子の良いセールストークが作りやすく、手持ち資金が少ない初心者の方が手を出してしまいがちな、危険がいっぱいの案件です。
実際にはその人の資金背景や投資方針によって異なるため一概には言えませんが、陥りがちなリスクを3つ、挙げておきます。
新築ワンルームの価値は、買った途端に下がる
新築マンションの売買価格には、販売時の莫大な広告宣伝費が上乗せされているため、物件本来の価値は、購入した瞬間に大幅に下がります。つまり、その物件を持ち続ける間、買った時以上の価値になる可能性は極めて低い、と言えます。
よほど何かの要因で急激に値上がりしない限り、売却によって利益を得ることは困難です。
空室になった時の収入はゼロではなく「マイナス」
1室しか持っていないマンションが空いてしまうと、次に新しい入居者が入るまで、当然ながら収入はゼロになります。更に物件購入のためにローンを借りていたりすると、その支払いは全額自己負担になります。
加えて管理費や維持費は入居者の有無に関わらずオーナーが負担しなければなりません。
節税対策になるのは最初の1年か2年のみ
どこで調べたのか、突然不動産会社から電話がかかってきて「給与収入から支払った所得税が還付されますよ」という甘いセールストークを聞くことがあります。しかしマンション1室の収入から必要経費としてマイナス扱いになるのは、不動産取得税と減価償却費のインパクトが大きい最初の1、2年だけ。3年目以降は恐らく収入が増える分、きっちり税金を支払うことになるでしょう。
ワンルームマンション投資、3つのメリット
最初にワンルームマンション投資のリスクについてお話ししましたが、その人の状況・考え方によってはプラスに受け止めることもできます。
不動産投資には必ずしも「こうすべき」という正解はないので、一方向からの情報を妄信することなく、複合的に判断していくのが鉄則です。その観点で、あえて「ワンルームに投資する際の前向きな考え方」をお伝えします。
駅近・東京23区内の立地なら、空室リスクが極めて少ない
不動産事業の大敵は空室。しかし最も安全にそのリスクを回避できるのは「立地」です。1棟ものはよほどの資金が無い限りなかなか都心には買えません。東京23区内で最寄り駅から徒歩圏内であれば家賃が下がる心配も少ないし、新築マンションは比較的設備も充実しているため、競合物件との差別化にも有利です。
1部屋×複数の場所に持てば、リスクを分散できる
万が一そのエリアに不足の事態(工場・大学などの有力施設の撤退や震災など)がおきても、そのダメージを軽減できます。一ヶ所にまとまって10部屋持つよりも安全ですね。
突発的な修繕の心配が少ない
毎月の修繕積立金を支払う代わりに、管理会社や管理組合がしっかりしていれば、細かい修繕や公共スペースの補修、計画的な大規模修繕などを請け負ってくれます。もちろん新築であれば当分の間、高品質の建物が維持できます。
ワンルームマンション投資の心得
フルローンは禁物
金額規模が小さいからといって、安易にセールスマンの勧めにのって契約したものの、思うように収益が上がらず、マイナス収支のまま売却せざるを得なくなる、というケースが最も多いのがワンルームマンションです。このケースを回避するには、銀行から多額の融資を受けずに、できるだけ現金比率を高くして購入することが賢明です。
ローン返済の額が少なければ、前述のような空室リスクにも大きく悩まされることなく、メンタル的にも折れずに維持できます。
需要の高いエリアを選ぶ
新築ワンルームで投資を進める場合には、「都心の駅近」の条件で5部屋くらい所有することができれば、次のステップにもかなり有力な資本になります。
例えばインターネットビジネスなどの副業でまとまったお金を稼ぎ、その度に1部屋ずつマンションを購入していけば、他の投資案件よりもはるかに安定した収入を確保することができるかもしれません。
ワンルームマンション投資の意義
利回りで考えると、ワンルームマンションは一棟ものに比べて低い場合が多く、家賃から必要経費をひくとほとんど手残りがない、もしくは月に数千円から1万円程度を拠出していくことになります。自己資金を多く入れればそういう状態は回避できますが、その分を回収するにも時間がかかります。
ただしこれは、お金を支払っているからといって損をしているわけではなく、将来の資産形成のために積立をしているのと同じようなものです。
まとまった現金を、通常の銀行預金にするよりははるかにリターンも多く、将来的には財産の構築にもなるので良いかもしれません。くれぐれも借金をしすぎないことが前提です。
何のために不動産投資をするのか、を考える
一方で、今は十分なお金がなく、まずはキャッシュを得ることを最優先に考えるなら、ワンルーム投資はお勧めしません。不動産投資は少ないお金を元手に高額の融資を受けることができる稀な分野であり、その特性は、土地付き一棟ものの方が威力を発揮します。
ワンルームマンションで少しずつ時間をかけて資産を増やしていくか、1棟もので短期間にキャッシュを増やしていくか、目的・目標によって正しい選択をすべきですね。
物件形態別の選び方については、こちらの記事も参考にどうぞ