これから不動産投資で成功したいのなら銀行開拓は避けて通れません。自己資金をたくさん持っていたり属性が極めて高い人は、銀行の方から「借りてください」と言ってくるでしょう。しかしそうでない人は、銀行員との面談の中で、上手に自分をアピールして好印象を持ってもらうことが重要です。

では銀行サイドから好ましく見えるために、面談ではどんなことをすればよいのか、私の実体験に基づいたアドバイスをお伝えします。

第一印象にすべてをかけろ!

服装はシンプルに、清潔感を醸し出す

「人は見た目が9割」と言われたりしますが、身だしなみは大切です。特に初めて行く銀行の面談では、資産背景と同じくらい「どんな人間か」を見られます。ビシッとキメていく必要はありませんが、さりげなく清潔感の漂う服装を心がけましょう。

ネクタイは必要か?

男性の場合、銀行員はかなりの確率で普段からネクタイをしているので、初対面の常識的なビジネスマナーとしてネクタイ着用の方が無難です。しかしノーネクタイだからといって無礼だと思われたり、マイナスイメージに作用することはないでしょう。自分で気になるならしていけば良いし、自然な服装の中で不要だと思えば特に問題ありません。

華美なアクセサリーは避ける

多少思い過ごしの向きもありますが、きらびやかな装飾品高価な腕時計をこれみよがしに付けていくことは避けるべきです。万が一「金遣いのあらそうな人」と思われてしまったら、余計なところで損をしてしまいます。

初回面談時に準備していくもの

何か言われてからでは遅い

最初は自己紹介程度で「融資審査に必要な資料は追ってご連絡します」と言われるケースがありますが、それでは時間がかかるし、効率も悪くなります。あらかじめ想定される資料はできる限り事前に準備し、最初の面談時に提出することで「本気度」を見せることが効果的です。

融資審査に必要な書類 ー 個人

銀行によって多少異なりますが、最低限準備しておいた方が良いものは以下の通りです。

 略歴書
 資産概要書
 確定申告書3期分
 源泉徴収票3年分(会社員の場合)
 身分証明証(運転免許証・健康保険証)
 持ち家がある場合はその登記簿謄本、住宅ローン返済予定表
 納税証明書

*「資産概要書」には、株・債権・投資信託・保険の解約金・確定拠出年金・学資保険・各種会員権などをできるだけ探し出し現金以外にも資産価値のあるものを積み上げておくことが意外と重要です。配偶者がいる場合には、その分もしっかり調べて記載しましょう。

融資審査に必要な書類 ー 法人

法人といっても物件を所有・運営するための体裁として会社の体をなしているだけのものであれば、やがて個人の資料も求められる可能性が高いので、最初から個人用の資料も準備しておくと良いです。連帯保証人になっている個人の分は資料を求められる可能性が高まります。

 決算書3期分(納税申告のページも含む)
 会社の定款
 履歴事項全部証明書(会社の謄本)
 会社の設立から現在にいたるまでのストーリーを簡潔に説明する書面

*「決算書は3期黒字でないと土俵にのらない」という話をよく耳にしますが、必ずしもそうでないからと言ってあきらめることはありません。どんな経営状態であれ、きちんと説明できることが肝心です。

*「これから新規法人を設立して融資を受けたい」というケースでは、個人資料を持ってその考え方を伝えるしかないです。銀行側も、新設法人は評価のしようがなく、代表者もしくは連帯保証人個人属性が評価の対象になります。

融資審査に必要な書類 ー 物件

すでに物件を所有しているのなら、その概要がわかる資料を準備します。

 物件概要書
 レントロール
 全部事項証明書(土地・建物)
 固定資産税通知書
 経費概算(メモ書き程度で箇条書きにする)
 ローン返済予定表

この他にも、銀行員を味方につけるとっておきの資料があります。
詳しくは巻末に記載します。

隠してもムダ!後からバレたら逆効果

都合の悪い資料は隠しておこうと思ったり、いわゆる「1棟1法人1銀行」で買い進めたものを、伏せておくことで負債額を少なく見せようというやり方もありますが、その手法が通用した時代は終わったと考えた方が良いでしょう。

今は銀行でも細かく調べるようになってきており、バレる可能性は極めて高いです。気が付かれなければそれで通ってしまうこともあるかもしれませんが、別法人があることが後からわかってしまうと最悪です。

そうなるともう一度最初から審査をやり直すことになり、担当者のモチベーションはかなり損なわれます。後から明るみに出た法人が融資審査に大きな影響を及ぼすほどの規模だった場合には、次からの融資の可能性もかなり閉ざされてしまいます。

すべて事前にコピーしておく

上記の資料は、原本を持参して銀行に預けたり、その場でコピーをとってもらうことが普通ですが、そんな悠長なことをしていてはいけません。事前にすべてコピーをとり、ファイリングしたものを持っていくのがベストです。

そしてまず銀行員に「ここまでしていただいているのですか!」と驚いてもらうことがポイント。これで相手の負担が一気に軽くなり、担当者ベースではとても前向きになるはずです。

コピーした資料は、そのままpdfにしてパソコンに保管しておくと良いです。いつでも再出力して、また別の金融機関を訪問する時にも役立ちますし、仲介不動産会社にメールで送信する時にもスムーズです。

極めて重要な「会話の順番」

名刺交換をしながら「本日はお時間を割いていただきありがとうございます。」と御礼を述べ、着席した後の会話のやり取りについて、理想的なシナリオは次の通りです。

まず相手のことを聞く

スタートから自分のことを話して、不動産投資にかけるアツい姿勢を伝えたい気持ちはわかりますが、自分のことを理解してもらうには、まず相手のことを知る方が先決です。

支店の歴史、相手の職歴、不動産融資に対する銀行の考え方、最近の融資情勢、どんな顧客がいるのか、融資可能な不動産のエリア、全貸付案件の中の不動産融資の割合、貸し倒れ率(=返済不能になる比率)、最近の成約事例など、簡単に質問できることはいくらでもあります

もしも個人的な趣味や関心事に対して共感が持てる話題があればチャンスです。距離がグッと縮まり、その後の展開がしやすくなります。

これはテクニックではなく、相手に関心をもつことが肝要です。コミュニケーションの基本ともいえます。

資料を出すタイミングを見計らう

ひととおり世間話をしたところで、相手の方からこちらのことを聞きたそうな雰囲気になってきたところで、「とりあえず審査に必要と思われる資料をお持ちしました」と言って、自己紹介をはじめます。

資料の説明ではなく、自分の経歴や不動産投資に対する考え方を話すことに軸足を置きます。一つ一つの資料を細かく説明することは大して重要ではありません。銀行側でも、どうせ後でじっくり読まなければならないからです。

準備した資料の真の役割は「ここまでやってきてくれたんだ」と思ってもらうことにあります。各資料については、その項目のみを伝えるだけで十分です。

「この他にも必要な資料があればただちに提出します」という言葉を添えて、決め文句にします。

「投資」という言葉は使わない

私は銀行の人と話すとき、できるだけ「投資」という言葉を発しないように心がけています。あえて「不動産投資」ではなく「事業」だということを説明することもあります。

具体的には、購入してからが大事だということ。投資は自分の力が及ばないところでお金が増えたり減ったりするけれど、不動産の場合は空室対策突発的な修繕などの課題に対して、自分自身が努力し続けることが大切だと思っている、などです。

これによって、これから不動産を購入してどのように運営していきたいか、をマインドの面でうまく伝えることができるのです。

初回面談での真の目的は?

相手のことに関心を払い、いくつかの情報を引き出した後、自分の不動産事業に対する考え方を簡潔に伝えることができれば、それで初回面談時の意義は達成したも同然です。

物件資料は必要か?

融資審査を依頼するのですから、対象となる物件資料は持っていった方が良いです。しかし本当に大事なことは、自分はどれくらいの融資が引けるのか、融資可能な物件の条件は何か、その目安を掴むことです。

たとえ今回持ち込んだ物件の融資がNGとか、希望の金額に満たない、条件が合わないという結果になっても構わない、という気持ちをもって臨むべきです。そもそも一回で融資が通るなんて奇跡に近いことなのですから、ダメで元々、くらいに考えておくスタンスがちょうど良いのです。

初回面談時に達成すべきこと

銀行開拓の肝は、その銀行の基準を知ること、そしてこれからの物件探しの条件を浮き彫りにすることにあります。

あせらず・あわてず・あきらめず。 一回でうまくいかせようと思わず、とにかく人に会って、自分のことを知ってもらえばそれでよし、と考えるのがベスト。この回数を増やしていけば、自然と知識・スキルも身に付いていき、やがて望む結果につながるのです。

補足:銀行員をうならせる絶対必須のアイテム

上記の資料に加え、私が独自に常備している所有物件の実績表をご紹介します。

これまで私が訪問したすべての金融機関で絶賛され、交渉を有利に進めることができた最強のツールです。

収支実績表『たしかめくん』

決算書とは別に、自分でつくる月毎の実績管理表。毎月いくらの収入があって、いくら支出があったか、を1円単位で正確に把握します。これは管理会社から送られてくる送金明細書と照合することによって先方のミスを防くことにも役立ちます。

満室率100%の理想的な状態を「期首計画」とおき、月を追うごとにリアルなデータを「収支実績」として記録していきます。その時の出費や空室、修繕費、仲介手数料、広告費などの収支実績を上書きすることで、課題を浮き彫りにします。

当初期待されていた「期首計画」とのギャップもリアルに把握できるため、キャッシュへのこだわり、高い達成率を維持するために何をすれば良いか、という意識がより強まります。

所有不動産一覧『売りどきくん』

複数の物件をA4一枚で俯瞰できます。住所、広さ、間取り、築年数などの基本データを一覧化できることに加え、適切な売却時期売買価格を見極めることにも役立ちます。

家賃収入をベースにして「その物件を何%で売るべきか」、利回り価格設定の目安になります。

一年ごとの残債残存簿価も明記し、売却時の利益譲渡税最終キャッシュフローまで正確に把握できるようになっています。

物件の資産状況がひと目でわかるので、銀行にとっても非常に重宝する資料だと感心されます。「本来は私たちが作らなければならない資料ですね。」とも言われます。

『たしかめくん』『売りどきくん』の作成方法についてはこちら。(無料です)