不動産を購入する際の消費税還付に関して、2020年9月30日をもってほぼ不可能になりました。

私はほとんどの物件で消費税還付を受けましたが、いよいよ税制が改訂され、もう同じやり方はできないということなのでやむを得ないですね。

大変残念ではありますが、一応、歴史の1ページとして、ひとつの知識として「消費税還付」を解説しておこうと思います。

(2020年10月1日 追記)

まずはカンタンに理解しよう

消費税還付の具体的な条件や申請方法については、個別事情に合わせてしっかりと調べ、専門の税理士さんに確認することが必要ですが、その前に、専門家と会話できるだけの基礎知識を備えておくことが大事です。

初めての方は、おそらく一度聞いただけでは把握しきれないと思われます(私がそうでした)。

税理士をはじめとする専門家の方々は、言葉足らずになることを嫌い、税務署の表現に合わせた正確な解説を隙間なく散りばめてくるのは仕方ないこと。でもそれがかえって理解を困難にしてしまいがちです。

ですので、専門家でも何でもない私が、これまでの実体験と顧問税理士さんに何度も聞いて確かめた、基本中の基本について、極めて平易な言葉をつかって解説致します。

不動産購入時の消費税はかなり大きい

まず、還付される対象は、収益物件の建物価格に含まれている消費税のことです。土地代には消費税がかかっていません。

物件購入時に、建物価格に含めて支払った消費税を、後から申告することによって、ほぼ全額、還付してもらえます。

不動産を購入する場合、中古物件の場合は特に、まず先に物件価格を決めて、それから土地と建物に金額を分け、後から消費税額を算出するケースがほとんどです。

したがって買主側としては、もともと最初から価格に含まれている「内税」になっているため、消費税についてあまりピンと来ない方が多いかもしれません。

そこに鋭く目をつけて、然るべき措置をとっていくと、新築・中古に関わらず、消費税の還付を受けられます。

例えば2億800万円の物件を購入し、 土地価格1億円、建物価格1億円、消費税800万円 とした時、消費税分の800万円が後から還付されるのですから、知っているのと知らないのとでは大違い、ということになります。

先に支払った消費税がなぜ戻ってくるのか?

消費税の還付を受けるには、本来消費税を納めるべき事業者であること、そして実際の取引の中に、支払った消費税と預かった消費税が含まれていることが必要です。

商品取引に例えると、事業者は商品を仕入れる際に消費税を支払い、その商品が売れた時に顧客から消費税を預かります。 そして納税の際には、預かった消費税からすでに支払った消費税を差し引いて税金を納めます。

1個の商品で考える商取引の場合は、たいてい仕入れの時に支払った消費税よりも商品を売り上げた時に預かった消費税の方が多いため、事業者がその差額分を納めるという理屈はとてもわかりやすいです。

ところが売買は1回きりではないので、年間を通じて支払った消費税預かった消費税を合算して申告するようになっています。 そして支払った消費税の方が多い場合に、税金が還付されるわけです。

【具体例】
売上 3,240万円(税込)→預かった消費税 240万円
仕入 2,160万円(税込)→支払った消費税 160万円
設備投資 1,620万円(税込)→支払った消費税 120万円
預かった消費税 240万円-支払った消費税(160万円+120万円)=−40万円

このケースでは40万円が還付されます。

いくら戻ってくるのか?

単純に支払った額から預かった額を引いた分を戻してくれれば良いのですが、そう簡単にはいかないケースがあります。 総売上に占める課税売上の割合に応じて、還付される金額の率が変わってきます。

前述の【具体例】のように、総売上の100%が課税売上であるなら全額還付されますが、たとえば家賃収入などの非課税売上があると、その割合の分は還付されません。

払い過ぎた分のすべてを還付してもらうには、課税売上割合が100%であることが必要です。

還付金額の計算方法

【計算式】 課税売上/総売上(課税売上+非課税売上)

この割合に応じて、支払った消費税額が還付されることになります。

例えば 課税売上が1,000円で、非課税売上が0円なら、100%、
課税売上が1,000円で、非課税売上が1,000円なら、1,000/(1000+1,000)=50%
が還付されます。

課税売上を忘れてはならない

たとえ少額であっても、何かしらの課税売上をたてることが必須です。

家賃収入は言うまでもなく「非課税」。ただし、建物に課された消費税を取り返すためには、必ず「課税売上」が必要です。

突き詰めれば、物件を購入した事業年度に課税売上があり、非課税の家賃収入が全く無ければ、物件購入時に支払った建物分の消費税の100%が還付される権利を有することになるのです。

逆に言うと、たとえ課税売上があっても、引き渡し時の家賃を日割精算等で受け取ってしまうと、上記の【計算式】の分母となる 「課税売上+非課税売上」 の値が大きくなり、消費税を還付される割合は極めて小さくなってしまいます。

消費税還付を受けるための条件

ここでは法人で物件を取得した際に、消費税が還付される一つの例をご紹介しましょう。

還付を受ける資格がある法人は、原則として以下の準備が必要です。

税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。

本来は前々年度の課税売上が1,000万円以上ある場合に課税事業者となりますが、ここではあえて時期や売上高に関わらず、自らの届け出によって課税事業者になっておきます。

次に、その法人が物件を取得した月の末日で、その期を閉める。

何月に設立した法人であっても、物件取得を機に決算月を再設定することになります。

その期末最終月(=不動産を購入した月)に、同時に「課税売上」をつくることが必須。  

家賃収入は非課税なので、家賃以外に売上をたてる必要があります。

ちなみに私の場合、この方法で3棟とも消費税還付を受け  

1棟目 7,456,107円
2棟目 8,672,597円
3棟目 8,856,527円
が還付されました。

税制改正後も失敗しないための注意事項

平成28年の税制改正で、この消費税還付にまた厳しい条件が加わりました。 国税庁の文言は難しすぎるので、あえて平易に表現し直すと、 物件購入後、3年間のトータルでもう一度、課税売上/総売上(課税売上+非課税売上) の計算をして、課税売上割合を報告しなさい、ということになりました。

それでもしも課税売上割合が大きく減っていたら、その分の還付した消費税を返納しなさい、というお触れです。ただし、「割合が著しく変動していなければ」この限りではありません。

著しい変動」とは、50%以上の差のことを言います。 つまり、課税売上割合100%で消費税還付を受けた場合には 3年トータルでの課税売上割合を50%以上に保てれば、 還付消費税の返還は要求されません。

課税売上割合を50%以上に保つ

【計算式】 課税売上/総売上(課税売上+非課税売上)において 非課税売上を上回るだけの課税売上をつくることが必要です。

平たく言うと、家賃収入と同額以上の「課税売上」3年間継続することになります。

課税売上の項目としてすぐに思いつくのは、自動販売機などの売上の他、テナント賃料、駐車場賃料などが挙げられます。

これだけではおそらく50%に足りないので、さらに事業収入として得られるものをプラスする必要があります。

しかしいきなり1,000万円、2,000万円の売上を作るのは至難の技。 商品を仕入れて販売するには、それなりの資金が必要になってきます。

効率的に課税売上をつくるための手段とは?

そこでもっとも注目されている手段が、「金地金」の売買

「売却」した瞬間に売上が確定します。 たとえば100万円の「金地金」を買って、すぐに売ると100万円の売上が経ちます。これを10回繰り返せばあっという間に1,000万円の課税売上ができる、というわけです。

「金」は金融商品の一つのカテゴリーに入るかもしれませんが、同じ金融商品でも株や証券には消費税が課せられません。さらに「金」は価格変動が少なく、課税売上を比較的安定的につくることができます。

もちろん普通の金融商品としても魅力的なものですね。

もはや収益物件での消費税還付はできない

これまでにも何度かの法改正がありましたが、まさしく「いたちごっこ」と言われるほどにいろんなやり方が発案され、実行されてきました。

しかし大変残念ながら、2020年の税制改正より、不動産関連の消費税還付に対し、いよいよ終止符が打たれることになりました。

もはやこのブログで仕組みを語る意義さえ無くなりそうですが、これまではせっかくお役に立てた記事でもあったので、もうしばらく掲載しておくことに致します。

また何か、良い対策が生まれることを心のどこかで願っています。