「積算評価の高い築古の木造アパートが狙い目」という考え方について解説をします。ここでは専門用語として「積算」「法定耐用年数」という言葉が出てきますが、じっくり読んでいただければ十分に理解できますので、知識を深めながら読み進めていただきたいと思います。

積算に関するおさらい

積算って何ですか?

「積算」とは、土地と建物の現在価値のことです。
国土交通省が定める路線価土地の価格を算出し、建物の方は構造体によって決められた価格があるので、これに広さをかけ合わせて計算します。

土地の価値は路線価を基準にしているため大きく変化しませんが、建物は年数を経るごとに老朽化していくため、どんどん価値が下がる仕組みになっています。

積算の計算方法について、詳しくはこちらをご参照ください。

積算は高い方がいいの?

積算について一般論を言えば、平米単価が高く広い土地に、新しく建てられたRCが最も高い価値になります。

しかしそういう物件はほとんどなく、手にも入りません。そんな素晴らしい物件は誰も手放さないし、市場に出てもあっという間に売れてしまうからです。

都心 vs 郊外、どちらの積算が有利?

都心に近い物件は土地が狭く、タテに高い(=高層の)建物が多いため、全体に占める建物の積算比率が高くなります。このため、年々、建物分の価値が減っていき、築何十年も経っているものはほぼ土地分の積算価格しか残っていません。それなのに物件価格は高いわけですから、売買価格に比較して積算価格がずいぶんと低いものになっていきます。

郊外は広い土地の物件が多く、建物の占める割合が少ないために、年が経つに連れて価値が減っていくスピードも緩やかなので、積算価格が維持できます。つまり、売買価格と積算価格が近いものが多いです。

しかしこれらはあくまでも一般論ですので、当然ながら場所によって個別事情が異なりますし、常に売買価格との比較でみるべきものですので、ここではひとつの「傾向」として押さえておいてください。

金融機関と積算の関係

融資額は積算で決まる?

これから収益物件を買おうとする投資家に対して、融資金額を決める基準として「積算」を採用している銀行が増えています。このため、土地の価値が高くて建物が新しいもの、例えば都心の新築一棟アパートやマンションなどは金融機関から高評価を受けられる可能性があります。

しかし実際の売買価格利回りをもとに計算されるため、家賃の高い都心の収益物件は、古いものでもかなり高額です。新しいものはさらに超高額になります。

したがって、都心の物件ほど積算価格と実際の売買価格の間に大きな乖離があり、たとえある程度銀行の評価を得られたとしても、売買価格とのギャップが大きいケースがほとんどです。この差を埋めるだけの現金がないと買うことができません。

売買価格とのギャップに注目せよ!

具体的に言うと、
積算が1億円のものであれば、銀行は担保価値として1億円の評価を出しますが、都心の物件の売買価格は1億5千万円だったりします。これを買うためには融資額1億円に加えて、あと5千万円の現金が必要になります。

地方物件の場合、都心に比べて物件価格が安いことは言うまでもありません。そして土地の面積が広ければそれだけ積算価格がキープされます。建物分は残存法定耐用年数(建物がどのくらいもつか、という観点で国が定めた年数)があれば積算価値がまだ残っているため、売価と積算価格の差がそれほど大きく開きません。売買価格1億円の物件に対して積算価格も1億円ならば、銀行の融資を受けてそのまま買うことができるわけです。

積算は、次の融資にも影響する

積算が低くなってくると、今度は金融機関から、所有している物件の資産価値も低いとみなされるようになり、ローン残債と積算を比較して、積算の方が少なければそれだけ負債を抱えている、と評価されてしまいます。

そうなると次の物件を購入するために融資を受けようと思っても、既にマイナスの負債を持っている状態になります。つまり初めて1棟目を買うときより不利になることもあり得ます。

これを補うには、これまでの実績から経営能力を評価してもらったり、自己資金をはじめとする属性の高さ、もしくは次に購入する物件の資産性収益性の高さが求められます。

積算の高い築古木造アパートが有利な理由

そこで最近注目されているものが、築古木造アパートです。

物件価格=積算がベスト

築古なので建物分の積算価値がほとんどなく、ほぼ土地の価値がそのまま積算となります。

これが新築だったり、残存法定耐用年数が十分に残っていたりすると売主側も強気に出て、売買価格を高めに設定してきます。満室であればなおさら強気になります。

また、土地の積算=売買価格とは限らず、売価はあくまでも売主が任意に決めるもの、ということを頭に入れておく必要があります。

値段を下げざるを得ない事情がある

しかしながら、残存法定耐用年数がほとんどない、もしくは空室が多くて売主が強気に出られない、でも所有者のやる気の無さや相続税対策など何らかの事情で早く売ってしまいたい、という物件の場合には、どうしても安く売り出さざるを得ません

そうしてほぼ土地の値段と等しいくらいの売買価格が出されると、実際の価格と積算の差が小さくなり、売買価格のわりに積算価格が高い物件、ということになります。

購入しやすく、売却もしやすい高積算

積算価値の減らない物件は最強

売買価格=土地値=全体の積算価格である物件を買うことができると、何年経っても積算の価値がほとんど変わりません

そうすると、いざ売却しようとした時に金融機関の評価も出やすく、次に購入する人が融資を受けやすくなります。

仮に売買価格に対して積算価格が低い物件を所有していると、次に購入する人が融資を受けて買おうとするならば、自己資金をたくさん持っていないと買えません。

築古木造アパートが有利な理由

ですので、積算が高い築古木造アパートで、土地値に近い売買価格で売り出されているものに関しては融資を受けて購入しやすいし、売却もしやすい、となるのです。

これからの金融情勢

金融機関はお金を貸したがっている

これまでの金融機関は、積算で評価を出しながらも、フルローンオーバーローンを出すために、追加で収益性、つまりいくらの家賃収入があるか、などの想定値を大幅に考慮してきました。

要するに、この事業にお金を貸しても安全である、という理屈上の根拠さえあれば、できるだけ多くのお金を貸し付けていきたい、それが金融機関の仕事であり、本音です。

金融庁の厳しい指導で貸しにくい状況に

しかし最近の金融庁からの厳しい指導により、やはり担保価値に等しい積算で融資額を決めるところが増え、いざとなったら売却してしまえばすぐに返済ができる程度の安全性を重視しているのが実情です。

もちろんすべての金融機関が積算だけを見ているのではありません。金融機関によっても、支店によっても、また時期によっても動向が変わるので、この点は常に注視が必要です。

まとめ

高積算築古木造アパートの魅力

積算が高い物件を探すことで、変わらない価値を手に入れることができる、というのが「積算の高い築古木造アパートが狙い目」の理由です。買うときも売る時も同じような値段で取引できるなら、所有している期間に得られる家賃収入インカムゲイン)がそのまま利益となるからです。

これは以前から一つの選択肢として言われていたことではありますが、現在、他のタイプの物件では到底融資が下りない、買えないという状況であるため、消去法によって一層クローズアップされている、ということになります。

注意しておくべきポイント

一方、築古木造アパート空室が多かったりそれなりに修繕費がかかったりするので、満室にするスキルや覚悟が必要ことも昔から変わりません。

安いボロアパートは探せばたくさんありますが、所有後に自分の力で再生・維持できることをしっかり検討することが大事です。

そのハードルさえクリアできれば、ずっと土地値相当の物件を持ち続けられることになり、資産価値も高く、いつでも売却できる強みがあります。

お宝物件を手に入れるために

今、資産のない人チャレンジ可能な不動産投資が限られていることから、高積算の築古木造アパートに注目する人が今後ますます増えてくることが予想されます。

つまり競争が激化するということ。そういう競争率の高い物件に出会うためには、不動産会社との人脈づくり信頼関係がより一層重要になってくるのです。