満室の維持は大家業を営む者にとって 最大の課題でありますが、 そのための対策についてはたくさんの書籍やセミナーがあります。

そのどれもが、 一度は試してみるべきものかもしれません。しかし空室対策はほとんどの場合 ケース・バイ・ケースで、「こうすれば必ず空室が埋まる」といった、たった一つの法則は まず存在しないのです。

いくつかのノウハウを覚える前に 理解しておいた方が良い「本質」が あります。 それは、客付けをしてもらう管理会社に 自分のことを充分に理解してもらうこと。そのためにはまず先に 「相手を理解すること」が重要です。

ここでは空室対策における最重要課題について、小手先のノウハウとは違った観点で、本質をお伝えします。

空室を埋めるためにできること

押さえておきたい基本施策

入居者を集めるためにはいろいろなパターンがあります。「家賃を下げる」 「広告費を増やす」「フリーレント(家賃無料)◯ヶ月」「リフォームで特徴的な内装にする」「設備を増強する」「モデルルームをつくる」「入居者の条件を緩和する」等々、やってみなければわかりません。

一律に効果のあるものはない

それも一度成功したからといって次も有効であるとは限らないし、時期立地ターゲットによっても効果が変わるため、一部屋一部屋を埋めるには、常に個々に合った施策を講じていくしかないのです。

管理会社の影響力を知る

キーマンをつかまえることが大事

客付けを仲介業者に委託しているのなら、実際に営業活動をしてくれるのは管理会社です。

管理会社の担当者によって、満室になるかならないかが左右されると言っても過言ではありません。

その管理会社の担当者がどれだけ親身になって動いてくれるか、そのためにきちんとコミュニケーションができているか、がカギを握ります。

元付け業者と客付け業者

貸主であるオーナーと契約を交わし、その物件の管理をしたり、家賃回収送金などの業務を行っている業者を「元付け」といいます。

元付け業者から賃貸物件の案内情報を受取り、部屋探しをしているお客様を物件に案内して、成約してくれる業者を「客付け」といいます。

元付け業者が直接、客付けの仕事をすることもありますが、物件情報は元付け」→「客付け」→顧客へと伝わっていくことをまず理解しておくことが基本です。

ここでは主に、オーナーと最も接点のある元付け業者、つまり物件の管理会社について理解を深めていきます。

管理会社社長のリアルな話

私が懇意にしている札幌の管理会社の社長さんから、セールスさんの本音を聞きました。この会社は元付け・客付けの両方を自社でやっているところです。常に社員教育を徹底し、オーナーの利益を真剣に考えてくれる社長の言葉です。

管理会社はサラリーマン大家を恐れている

営業マンは オーナーに対して 「近寄りがたい人」「話し難い人」 という印象をもっている人が ほとんど。 なぜならば、1棟のマンションや アパートをもっている人は、自分とは別世界の富裕層で、 資産家でもあり経営者でもある スゴイ人、と思われるからです。

たとえ事実がどうであれ、 「そんなつもりはないのに」と 感じようとも 世の中の印象として 「そういうもの」なのです。

そんなオーナーから「あの時こう言ったよね?」「満室にできない理由を教えて」「内見が何回あったのか、データ出して」などと言われたら、もう足がすくんでしまうそうです。

もしくは、表面上は言うことを聞いてくれているようでも、確実に気持ちは離れていきます。

苦手な人と思われたらおしまい

そんな関係をつくってしまうと、例えば空室が出た時、セールスは気持ちばかり空回りしてしまうか、言い訳が多くなって的確な提案ができなくなり、良い結果を出せません。

管理会社のセールスさんも「人間」ですから、どうしても好き嫌いや苦手意識が芽生えてしまいます。

セールスの気持ち次第で動き方が変わる

そしてやっぱり一番の成果に結びつけやすいのは「この人の物件を決めてあげたい」と思ってもらうことです。

そのためには、偉ぶらず、追い込まず、たくさんの雑談をして「柔らかい雰囲気」を醸し出すことが大切です。

頭でわかっているつもりでもなかなか空室が埋まらないことにイラついたり、頼んだことをなかなかやってくれない時に責めたりしてばかりいては、けっして味方にはなってくれません。

こういうことに気づけるかどうかで仕事の成果も変わっていきます。

心をつかむ秘訣とは?

喜ばれるもの、インパクトのあるものを贈る

賃貸経営の基盤となる空室対策を円滑に進めるためには、管理会社とオーナーの距離をいかに縮められるか、ということがポイントになります。

そのためには、 例えばお中元お歳暮を送り届けて御礼の意を伝えるという手もありますが、実際にそれがどこまで効果的なのかはわかりません。

前述の管理会社社長の話では、品物よりも、感謝の手紙の方がはるかに気持ちが伝わるそうです。それも担当者に宛てるのではなく、社長経由で担当者に送られることが、全社的に指揮を高め、注目度をアップさせるのに貢献します。

気持ちの先にあるもの

手紙を出すか、直接訪問するか、この2つのいずれかを無くして真心は伝わらないのです。その先にあるのは 「自分の物件を1番に決めたい」 と、管理会社に思ってもらうことです。

現状では、手紙を書いたり直接訪問するオーナーは きわめて少ないそうです。 だからこそ、それができる人は相手に印象づけることができ、そこから距離を縮め、コミュニケーションを円滑にします。

自分のために働いてくれる人

そうして人間関係ができたら 次に「管理会社が動きやすいように」 配慮すること。

「なぜ部屋が埋まらないのか」 「どんな営業をかけているのか」 「何件の内見があったのか」 「このままでは採算がとれない」 ということで、相手を責めることが 一番のタブー

管理会社のセールスはあくまでも会社の従業員なので、オーナーの物件に空室が出ようが収支がマイナスになろうが、自分の給料には影響しないのです。 それなのにただ責められるだけでは、表面的には誠実に見えても心の中ではますます壁ができる一方です。

報告書をつくっているヒマがあったらどんどん現場に出てもらう方がマシです。 提案力の高い管理会社であればあるほどノウハウは相手に任せるべきです。

まとめ・どれだけ信頼を得られるか

「どうすれば入居者をつけられるか」を 素直に、謙虚に、 現場を熟知している営業マンに尋ね、言われた通りにして、あとは信じて任せること。 このスタンスが大切です。

「言われた通り」というのは「言いなりになる」こととは違います。こちらの主旨や要望を的確に理解してもらって、オーナー・管理会社・入居者全てにメリットがあるような提案をしてもらい、それを受け入れることです。

提案力が高いかどうかは、やはり日頃のコミュニケーションから感じとるしかありません。「あのオーナーの物件を満室にしたい」と相手に思ってもらえているかどうか、この本質にフォーカスしてコミュニケーションを取ることが、最も有効な空室対策になります。

やはり、謙虚な姿勢と感謝の気持ちを持ち続け、「人のつながり」を大事にすることが本質ですね。