不動産投資に興味を持つと、最初に関心が集まるのは利回りというキーワード。銀行では聞いたことがあるけれど、不動産投資の利回りってなあに? そんな素朴な疑問にスバリお答えします。

利回りとは?

一般的に「利回り」と言えば、預けたお金に対してどれだけの利息がつくか、つまり「利」が「回る」ということです。預けたお金を増やしたい時に必ず目安にするものなので、預金投資をするときには一番関心の高いものでしょう。

ところが銀行預金などで表される「利回り」と、不動産投資でいう「利回り」は、厳密には意味や使い方が違います。安易に「いくらかえってくるから」「これだけのお金が残るから」と思い込まずにしっかりと理解しておきましょう。

誰でも知っている預金の利回り

馴染み深い銀行預金でいう利回りは「金利」「利率」とも呼ばれます。

簡単にいうと預けたお金に一年間でいくらの利息がつくか、ということ。

例えば100万円を一年預けて、利息が1万円だったら利回りは1%ですね。

そう、利息÷元金×100=利回り(%) です。

現実には、大手都市銀行の定期預金金利は0.01%ですので、100万円を1年間銀行に預けても、もらえる利息は100円ということになります。

安心してはいけない不動産投資の利回り

一方、投資分野での利回りは、いくらの投資をして、いくらのお金が得られるのか、という点では、預金の利回りと似ていますが、特に不動産投資の場合、その利回り分がそのまま現金として残るわけではありません。

銀行預金でいう「利息」と「元金」の関係を、そのまま投資リターン収入」と「物件価格」に置き換えると

収入÷物件価格×100=利回り(%)

となり、大枠では同じ意味に思えます。

ただし不動産投資においてはいろんな局面で「利回り」という言葉が出てくるので、それぞれの正しい理解をしておくことが大事です。

不動産投資では3つの利回りを理解しよう

物件概要書にあるのは「表面利回り」

まず収益物件を紹介されるとき、必ず最初に目にするのは「物件概要書」。その名の通り、物件の所在地や構造体・築年数・部屋数・間取り・用途地域、その他法令上の制限などが記載されています。

もちろんそこには一番大事な「家賃収入」が掲載され、ここに「利回り」が何%と表示されています。

この利回りは「表面利回り」または「グロス利回り」とも言われ、単純に満室時の家賃収入物件価格で割ったもの。

賃収入が1,000万円で物件価格が1億円だったら、利回り10%。同じ物件価格家賃収入が800万円だったら利回り8%、となります。

つまり、利回りが高いほど、物件価格の割に家賃収入が多い、ということ。逆にいうと、利回りが高い物件は、得られる収益に対して購入価格が安い、となります。

実際には賃貸経営するのに管理費やら税金やらいろいろな経費がかかるので、家賃収入が1,000万円あったとしても、経費はそこから20%くらい持っていかれます。

表面利回りの通りの収入は、まずあり得ません。

あ、でもこれ、「偽り」とか「騙す」という意図はないのです。あくまでも同じ基準でシンプルに物件を比較するための指標と認識してください。

購入時に気をつけるのは「実質利回り」

ネット利回り」とも言われます。

その物件を維持管理するためにかかる経費には、管理を外注している場合には管理会社に支払う管理費、つまり家賃管理費建物管理費(清掃・点検費用など)がかかるし、水道光熱費インターネットセキュリティー費用もあります。さらに、不動産を所有している人には毎年「固定資産税」が課せられます。

これらの固定費を合計すると大体家賃収入の20%くらいになるのが一般的です。

また、購入時には物件価格に加え、登録免許税などの諸経費も「投資額」に上乗せされるべきものです。

そういった実質的な投資額から経費を差し引いて、得られる収入を計算したものが「実質利回り」。

当然ながら、表面利回りよりも厳しい値になります。

管理費や税金は、物件によって大きく変動しますから、いざ買おうと思った際に、慎重に検討するべきものです。

一番大事な3つ目の「利回り」

利回り=得られるお金」にほぼ等しい銀行用語とは大きく違う点は、このように、経費がかなりかかる点と、あとは必ずしも物件は満室を維持し続けることができない、ということです。

実際に賃貸経営をしていくと、やがて空室が出て、家賃収入が減ります。さらにその空室を埋めるためには仲介手数料広告費(AD)がかかり、単に家賃分の収入が少なくなるだけでなく、新しい住人に入居してもうための経費が必要になります。

また、水漏れや機械・設備の故障、庭の植木の伐採など、前述のさまざまな経費の他にも、建物にはいつか必ず突発的な修繕の必要性が出てきます。

こういった運営過程の中での実質的な家賃収入から、実際にかかった全ての経費を差し引いたものを「営業純利益」といい、これを物件価格で割ったものを「NOI利回り」と呼びます。

NOI」とは Net Operating Income の略で、

覚えておくと

へぇー、よく知っているねー。と言われるかもしれません。

「利回り」の本質を理解せよ!

一般的に不動産投資でいう「利回り」とは「表面利回り」のことです。これは単に物件を比較検討するときにはある程度参考になるけれど、購入するときには、借り入れ金利管理費・経費を同時に考えて、いくらくらいお金が手元に残るのかということを意識しておくことの方がよほど重要なのです。

高利回りの裏側にあるものとは?

表面利回りが高いものは高いなりの理由がある、ということです。それでも、基準はみな「表面利回り」で表示されています。

高利回りの物件を見て飛びついても、それはほとんどが空室だったり、老朽化していて修繕費がかかったり、エレベーターや立体式駐車場があって電気代などの経費が大きくかかってしまうような物件であることが多いということも注意が必要です。

こういう場合には、自分で客付けの工夫をして満室にできるとか、人脈を使って低コストで修繕ができる自信のある人はチャンジできますが、あまり経験のないうちから高利回り・高コストの物件に取り組むのはお勧めできません。

低利回りなら買わない方が良いのか?

今は物件価格が高いため、一定の収入を高額の物件価格で割った利回りは、どうしても低くなる傾向があります。しかし、そういう時代には金融機関の借り入れ金利も低かったり、返済期間を延ばしてくれるケースもあります。もちろん物件によっても異なります。

実質的な利回り、というよりむしろ最終的な「手残り」を考えるとき、金利や返済期間によって大きく変動する「返済額」が、支出の多くの部分を占めることを忘れてはいけません。

したがって、単に利回りが低いからやめる、というのではなく、どこの銀行で、いくらの融資が受けられるのか、金利は何%か、返済期間は何年か、それによって毎月の返済額はいくらになるのか、ということまで計算してから購入を判断すべきなのです。

賃貸経営では利回りをこう使え!

もちろん利回りは高いにこしたことはないのですが、不動産投資においてはその真の意味を、それぞれのステージによって正しく理解し、判断・行動することが大切です。

物件を購入するときにチェックすること

高利回りに安易に飛びつかず、他の物件と比べて何が違うのか、高い利回り安い販売価格ということなので、なぜそうなっているのかを確認すべきです。もしくは家賃が相場よりも高く設定されているのか、ということをチェックしてみることも肝要です。

そして、利回りと合わせて把握しなければならないのは「借り入れ金利」と「返済期間」。この3つをかけ合わせてはじめて正確なキャッシュフローが算出できます。この2つは金融機関によって異なるため、物件概要書には書かれていません。

賃貸経営をしている最中には気にしない

物件を運営しているときには「利回り」はほとんど意味がありません。それよりも経費節減や満室の維持に注力することが、賃貸経営の本質です。

売却時に価格を決めるために

いざ売却を考えるとき、「利回り」は改めて重要になってきます。売買価格は利回りによって決まることがほとんどです。

そのためにも、常に満室にすること、家賃はできるだけ下げないことが大切です。高い家賃収入を確保できていれば、その分だけ高く売却することができます。それが真の出口戦略と言えるでしょう。

利回りを正しく使いこなして、不動産会社や金融機関と適切なコミュニケーションを取ることが、不動産投資家の基本ですね。